自動車販売の事例にみる、コロナ前後の購買行動の変化とデジタル活用

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、消費者の購買行動に大きな変化が起きました。特にリテール業界においては、従来のマーケティング活動を見直すことが余儀なくされる状況です。本記事では、2020年10月20日に弊社にて開催のウェブセミナーの内容をもとに、購買行動の変化とデジタル活用をテーマとして、これからの消費者との向き合い方をお伝えします。

新型コロナウイルス感染拡大以前のマーケティング活動を振り返る

今回、トヨタ自動車販売店のサポートを担当されている、トヨタ自動車株式会社 国内営業部 神奈川県地区担当部長 平野 義孝氏にお話を伺いました。平野さんによると、自動車販売においては新型コロナウイルス感染拡大以前から「購買行動の変化は起きていた」と言います。

「自動車販売においては、インターネットが普及する前後で、お客様が車を購入するまでに訪れる店舗数や、来店回数に大きな変化がありました。インターネットが普及する前は、お客様は車を購入するために複数の店舗を訪れ、さらにカタログをもらったり試乗をしたりと複数回来店されることが一般的でした」

インターネットの普及により、お客様は店舗を訪れなくても、多くの情報を得られるようになりました。つまり店舗側としては、お客様に来店してもらうためのマーケティング施策が必要になったのです。

「車を欲しいと思ったお客様は、まずインターネットで検索をします。インターネットでいろいろな情報を調べ、購入する車種やお店まで決めてしまうことが多くなりました。これはお店側からすると、お客様へのコミュニケーションの回数が減ることになります。そのためトヨタ自動車としては、お客様との最初の接点となるインターネット=デジタルに注力するために、販売店さんと一緒にデジタル活用について勉強しながら、様々なチャレンジを行ってきました」

コロナ後、デジタルは真剣に取り組まなければならないことに変わった

新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言下においては、多くのリテール企業と同じく、自動車販売店も大きな影響を受けました。平野氏によると、自動車は高額な商品ということもあり、先が見えない不透明な時期に車を購入しようというお客様は少なく、積極的な販売を行える状況ではなかったそうです。

「緊急事態宣言が明けても、状況がすぐに変わることはありませんでした。コロナ禍における新しい生活様式が少しずつ浸透しはじめ、お客様が外に出るようになってからも、積極的に販売をしていくのは難しい状況でした。しかし、トヨタ自動車では新型車の販売開始やモデルチェンジ車両の登場もあり、お客様に告知をしたくても積極的なアプローチはできない。そのため、車が欲しい人にどのようにアプローチしていくかを考えました」

そのアプローチ手法として、自動車販売店は平野氏とともにデジタル活用を本格化しました。

「まずは、どのようにお店に来てもらうかという点です。コロナ前からの傾向と変わらず、お客様はいろいろな情報を調べてからお店に来ているため、改めてデジタル活用が重要だと感じました。お客様は、車やお店の情報はもちろんですが、感染症対策の内容や営業時間など、あらゆる情報を調べてから来店されます。コロナ前からデジタルに力は入れており、販売店さんもやらなければならないと思ってはいましたが、コロナ禍によって『真剣に取り組まなければならない』ことに意識が変わったと思います」

「登録したものの更新ができていなかった『Googleマイビジネス』は、オムニバスさんにコンサルティングしていただき、店舗の最新情報や新車情報、感染症対策について細かく掲載しました。そのほかにも、HPはもちろんのこと、ブログや広告掲載など、販売店さん側も重要性を肌で感じたこともあり、より一層強化して取り組みました」

後半に続きます。